朝の通勤時、たまに見かける男性がいる。
初めて見かけた時には、驚きのあまり、思わず二度見してしまった。
私は車、その男性は自転車ですれ違うので、見かけるのは一瞬のこと。
その男性は、自転車を漕ぎながら、左手でハンドルを握り、右手を大きく動かしながら、とても楽しそうに歌っていたのだ。
声は聞こえなかったので、もしかしたら芝居とか、そんなものだったのかもしれない。
だが、公衆の目を気にせず、そこまで自分の世界に入り込めるなんて!
二度見して思わず笑ってしまったが、その後しばらく幸せな気持ちが続いた。
なぜだか、思い出しても幸せな気持ちになる。
それから、密かに私の「幸福のサイン」に認定させてもらった。
飛行機雲を見たらいいことがある。
虹を見たらいいことがある。
そんな私の幸福のサイン。
家族でも親戚でもないのに、見ず知らずの私をこんなに幸せな気持ちにさせてくれるなんて、ありがたいことだ。
その男性にしてみれば、自分を見て幸せを感じている人間がいるなんて、思いもしないだろうが。
また出会えるのを楽しみにしている。